先日、山口県で開催された日本緩和医療学会 中国・四国支部学術大会に参加してきました。
今回は、メディカル・タッチ認定で周南公立大学でお仕事をされている加茂さんが、音楽療法・アロマ・触れるケアのブースを出されることになり、私も応援とお手伝いに伺いました。
普段は関西を中心に認定者さんの活動をサポートしていますが、関西から離れた場所で活動している認定者さんと、こうして一緒に学会に参加できる機会は、なかなかありません。
加茂さんは、まだ私が大学に入る前の緩和アロマ講座で活動している頃にご受講されて長いお付き合いです。
ですが、なかなか一緒に活動する機会がなくて今回、山口で一緒にブースに立てたことを、とても嬉しく思います。
目次
たくさんの医療・福祉職の方が、メディカル・タッチを体験してくださいました
ブースには、緩和ケア病棟で働く看護師さんや医師だけでなく、ソーシャルワーカーや音楽療法の方など、緩和ケアに携わっているさまざまな職種の方が来てくださいました。
実際にハンドタッチを受けていただくと、
「気持ちいいですね」
「こういうケアがあるんですね」
「患者さんにもしてあげたい」
そんな声をたくさんいただきました。
中には、訪問看護師さんから、
「患者さんにやってあげたい」
と熱心に質問される方もいらっしゃいました。
メディカル・タッチは「知識として知ってもらう」だけではなく、実際に自分が触れてもらうことで、その心地よさを感じ、「自分も誰かにしてあげたい」という気持ちにつながるケアかなと思います。
認定看護師さんが活動報告されました
今回、ブースを出展されたメディカル・タッチ認定看護師の加茂さんは、山口県内の病院で緩和ケアボランティアを続けられています。今回、加茂さんはその活動報告もされました。
患者さんにアロマやタッチを行ったときの反応や、どのような場面で取り入れているのかが丁寧にまとめられていて、熱心な活動の様子が伝わってきました。
具体的な患者さんの声がまとめられていて、参加された方々もとても熱心に掲示を見られていました。
生徒さんの素晴らしい活動報告を見ることができて、改めて緩和ケア病棟での触れるケアやアロマの果たす役割やボランティアの役割について考える機会になりました。
音楽と香りがつくる、心がゆるむ時間
そして、学会の中では音楽療法の発表もありました。
好きな楽器を一つ選び、海の香りをイメージしたアロマの香りを楽しみながら、自分の好きなように音楽を奏でるという時間。
会場にいる皆さんが、それぞれ思い思いに音を出しているのですが、次第に表情がやわらぎ、とてもリラックスされている様子が伝わってきました。
「上手に演奏する」のではなく、
「自分が心地よいように音を出す」。
そこに香りも加わることで、五感を通して自然と心と身体がゆるんでいくようでした。
この様子を見ながら、あらためて音楽も、緊張を和らげたり、心を落ち着かせたりするために大切なものなのだと感じました。
音楽、香り、そして触れること。
方法は違っても、どれも人の心や身体に働きかけ、「少し楽になれる時間」をつくることができます。
緩和ケアの中には、こうしたさまざまな方法で、その人の苦痛を和らげ、心地よく過ごせるように支えるケアがある。
今回の学会では、そんなことも改めて感じることができました。
心に残る講演との出会い
そして今回、もう一つ、私の心に強く残った出来事がありました。
偶然にも、堀川恵子さんの講演を聴くことができたことです。
以前、テレビで偶然、堀川さんの特集を拝たことがあり、そのときから気になっていた方でした。
ご主人の療養生活や最期の時間を通して、腎不全の患者さんとご家族が抱える苦しみや迷い、そして治療だけでは支えきれない心の痛みに向き合ってこられた方です。
堀川さんは、その経験をもとに本も出版されています。本の中では、ご主人との日々や病気の経過、医療者との関わり、家族として感じたことなどが綴られており、腎不全とともに生きること、そして最期までその人らしく過ごすことについて考えさせられます。
テレビで拝見したときにも感じましたが、堀川さんのお話には、実際にご家族として病気と向き合ったからこその「重み」がありました。今回、直接お話を聴くことができ、とても心に残りました。
堀川さんのお話の中で
「腎不全には出口がない」
という言葉が、とても心に残りました。
一方で、現在の日本の緩和ケアは、がん患者さんを中心に発展してきた背景があります。
でも、病気によって苦しみ方が違っても、「苦痛を少しでも減らしたい」「安心して過ごしたい」「その人らしく生きたい」という思いは、がんの患者さんだけのものではありません。
講演の中で、
「QOLだけでなくQOD(Quality of Death)の時代。疾患別ではなく、症状別の緩和ケアが広がってほしい」
というお話がありました。
この言葉が、ずっと心に残っています。
メディカル・タッチも疾患別のケアではない
私はこの話を聞きながら、メディカル・タッチも同じなのだと思いました。
メディカル・タッチは、
「がんの患者さんにするケア」
でも、
「認知症の方にするケア」
でもありません。
痛みがある。
不安がある。
眠れない。
緊張している。
孤独を感じている。
そんな「その人が今抱えているもの」に寄り添うためのケアです。
だからこそ、疾患ではなく、その人を見る。
患者さんの状態を見て、
患者さんの表情を見て、
患者さんの呼吸を感じて、
患者さんの状態に合わせて触れる。
それが、私が大切にしているメディカル・タッチです。
患者さんに何かできることはないか?と思った時に触れるケア
看護師として働いていると、
「もっと患者さんに何かできることがあれば」
と思うことはありませんか?
薬を使う。
処置をする。
バイタルサインを測る。
清潔を保つ。
もちろん、どれも大切な看護です。
でも、それだけでは届かないところがあります。
不安でいっぱいの患者さん。
眠れない患者さん。
言葉ではうまく気持ちを表現できない患者さん。
そんな患者さんに、看護師がそっと手を添える。
「大丈夫ですよ」と言葉で伝えるだけではなく、触れることで安心を届ける。
それも、看護の一つだと私は考えています。
今回の山口での学会では、たくさんの医療・福祉職の方にメディカル・タッチを体験していただきました。
そして、「患者さんにしてあげたい」という言葉をいただきました。
この言葉が、これからも私がメディカル・タッチを伝えていく大きな力になります。
疾患を超えて。職種を超えて。
そして、病院の中だけではなく、訪問看護や介護の現場、人生のさまざまな場面で
触れるケアを、もっと多くの方に知って頂きたい。
今回の山口での出会いを通して、そんな思いをあらためて強くしました。
そして、たくさんの方とお話ができて私自身も緩和ケアについて改めて考える機会を頂きました。
加茂さん、貴重な機会を有難うございました。




