忙しい看護の現場だからこそ、“ゆっくり触れる”という選択を

看護の現場は、毎日が時間との闘い。
気がつけば「急いで」「手早く」が当たり前になっていませんか?

先日、メディカル・タッチの講座を受講した看護師さんからこんな声をいただきました。

「普段の癖で、ついついタッチの速度が速くなってしまいます。ゆっくり触れるのってなかなか難しいですね。」

その気持ち、とてもよくわかります。
でも、タッチングは「ゆっくり」が基本です。

なぜなら、皮膚にはC触覚繊維という“心地よさ”を感じるセンサーがあり、C触覚線維を活性化させるには、ゆっくりとしたスピードが必要だからです。
心地よさを脳に届けるためには、ゆっくりとしたスピードで触れないといけません。

実際にゆっくりとした速度で、タッチングの練習をしていただくと、

「触れている私まで、なんだか眠くなってきました…!」と驚かれていました。

タッチングは、お互いにとって心地よい時間

タッチングは、たとえて言うと美味しいお茶を一緒にゆっくり味わうような時間。患者さんと看護師、どちらにとっても、ほっとする時間です。

忙しい時こそ、あえてゆっくりと触れる。
それは決して“手を抜く”ことではありません。

ササッ早く10回撫でるよりも、ゆっくりと1回でも撫でる方が心地よさはもたらされるんです。心地よさは、回数ではなくて触れる速度が大切です。

さらに、この“ゆっくり触れる”タッチングによって、脳内では「オキシトシン」という幸せホルモンが分泌されると言われています。

オキシトシンは、安心感や信頼感を生み、人とのつながりを深める働きがあります。
そしてオキシトシンは、触れられている側だけでなく、触れている側からも分泌されるそうです。

患者さんだけでなく、触れている看護師もお互いが幸せな気分になれるのがタッチングの良いところです。

看護師自身をリラックスに導くセルフタッチ

講座の中で、さらにセルフタッチも体験していただくと、

「自分で自分を触れるのも、こんなに気持ちいいんですね。普段はあまり、自分に触れる機会ってないけど、リラックスするのって大事ですね」という声も聴かれました。

触れることは、言葉を使わないコミュニケーション。触れる側の気持ちは、言葉以上に相手に伝わっていきます。だからこそ、まずは自分の心と身体が整っていることが大切。

看護師は“ケアを施す側”ですが、まずは自分の身体と心を整えることで、患者さんへのケアの質も上がるのではないかと思います。

タッチングは、患者さんと看護師、双方のためのケア

忙しい看護の時間だからこそ、あえて“ゆっくり触れる”時間を取り入れてみてはいかがでしょうか。ゆっくり触れることは、C触覚繊維を活性化させるために必要な要素の一つです。そして、ゆっくりと患者さんに触れることは、患者さんの安心だけでなく、触れている自分自身にとっても気持ちを安定させる時間になります。

忙しいからこそ、“ゆっくり”が必要。まさに「急がば回れ」ですね。

メディカル・タッチの講座では、“ゆっくり触れる”ことの心地よさを実際に体験しながら、C触覚線維にスイッチを入れるための効果的な触れ方をしっかりお伝えしています。


受講生の看護師の皆さんから

「触れることがこんなに気持ちいいなんて」

「タッチングをしていると患者さんだけじゃなく、自分も落ち着いてきます。」そんな声がたくさん届いています。

メディカル・タッチが患者さんだけでなく、看護師自身の気持ちの安定にも役に立てたら、と思っています。

 

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この記事を書いている人

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見谷 貴代

看護師/アイグレー合同会社副代表 アロマセラピストから看護師になり、緩和ケア病棟や高齢者施設で5,000人の患者にタッチングを実践。病院や高齢者施設、製薬会社、企業などで研修や講演を実施。大学でも非常勤講師として活躍している。