「触れるケア」の力を実感!女子大の授業でタッチングケア体験

先日、私が非常勤講師を務める大阪樟蔭女子大学の「香りの美学」の授業でタッチングケア体験を行いました。
最初は皆さん、「あまり友達とこんなことしたことがない」と少し緊張した面持ちで、どう触れたらいいのか戸惑っている様子でした。
でも、ペアを組み、お互いの腕にタッチングを始めると、次第に表情がやわらぎ、教室には自然と笑顔が広がっていきました。

「なんだか、やってる側も気持ちいいです」
「友達と、もっと仲良くなれた気がします」

そんな声が、聞こえてきました。

すでに知っている友達同士でも、そっと触れ合うことで、心がさらに近づいていく!

それが“タッチ”の持つ力です。

 

人と人の絆を深めるオキシトシン

やさしく触れられることで、「オキシトシン」と呼ばれるホルモンが脳から分泌されることが、わかっています。オキシトシンは「愛情ホルモン」や「絆ホルモン」とも呼ばれ、人と人との心のつながりを深める大切な働きをしています。

このホルモンが増えると、不安やストレスがやわらぎ、相手への信頼感や共感が自然と高まります。

毎年タッチング体験はシラバスに入れていますが「今年もちゃんと実習してくれるかな?」と、毎回、少しドキドキする授業です。でも、そんな心配はあっという間に吹き飛びました。

学生さんたちは「気持ちがいい!」と楽しそうに、自然に笑顔になって、会話も弾んでとにかく賑やかでした。
そして、タッチを受けている人だけでなく、触れている側の学生さんからも
「やってたら、私まで気持ちよくなってきた!」という声が聞かれたのです。

そうなんです、触れることで癒されるのはタッチを「受ける側」だけではありません。
「する側」にも、いい変化が起こる。これこそタッチの持つ力です。

触れることで生まれる“安心感”と“つながり”

今年も若い学生さんたちの様子を見ながら、改めて私は「触れること」は人と人との心をつなぐ、大切な手段だと実感しました。

看護の現場でも、患者さんは、言葉にはできない不安や寂しさを抱えていることが多くあります。そんなとき、そっとやさしく触れるだけで、患者さんの心がふっとほぐれ、安心や信頼が生まれることがあります。

私が緩和ケア病棟でタッチングをしていた時に、初めてお会いする患者さんが、ご自身の病気のこと、これまでの人生のことを、たくさんお話してくださいました。

言葉がなくても、触れることがきっかけとなって、心が通い合う。そんな瞬間を、私は何度も経験してきました。

人と人との「心の距離」を近づけるタッチは、看護の現場でもきっと活かせるはず。

忙しい毎日のなかで、患者さん一人ひとりとじっくり向き合う時間をつくるのは、なかなか難しいかもしれません。
それでも、検温のときにそっと手を添える、処置の前に肩にやさしく触れて声をかける。
そんなほんの小さな触れ方でも、患者さんの不安や緊張をやわらげ、信頼関係を築く小さな一歩になります。

今回、若い学生さんたちの笑顔や「気持ちいい!」という素直な声から、私自身も改めて“触れることの力”を感じることができました。たとえ短い時間でも、そっとやさしく触れるだけで、人の心には安心感やあたたかいつながりが生まれます。


そのことを、学生さんたちからも教えてもらえた気がしています。

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この記事を書いている人

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見谷 貴代

看護師/アイグレー合同会社副代表 アロマセラピストから看護師になり、緩和ケア病棟や高齢者施設で5,000人の患者にタッチングを実践。病院や高齢者施設、製薬会社、企業などで研修や講演を実施。大学でも非常勤講師として活躍している。