介護する家族にこそ、休める場所を──タッチングケアが届ける“レスパイト”の時間

最近、「AIがおススメしてくれたんです」とお仕事のご依頼をいただくことが続いています。

AIがご縁をつないでくれるなんて!ビックリしますが、ちょっと嬉しい時代ですね。

そんなご縁から、11月から新しい場所で講座を担当させていただくことになりました。

この講座には、私なりの想いがあります。
それは「介護をしている方にこそ、休める場所が必要」ということです。

最近のカルチャーセンターには「より美しく、より健康に」というテーマに加えて、家族の介護をされている方の参加が増えているというお話を伺いました。

「そういう方にこそ、心と身体をゆるめられる“レスパイト”の場をつくりたいですね」
そんな想いを、マネージャーさんとたくさん語り合いました。

介護するご家族が教えてくれたこと

実はこの思いは、ある出来事がきっかけで、私の中でより強いものとなったのです。

先日、認知症とタッチングケアの講座をさせて頂いた時のことです。その中で、私は認知症の方のケアと同じくらい、介護するご家族のケアも大切だという話をしました。

認知症の介護には、どうしても受け入れがたい現実や、誰にも言えない葛藤がついてまわります。そして、そばで見守るご家族は「私が頑張らないと」と、一人で抱え込んでしまうことも少なくありません。私は、そんなご家族の“心の奥にある思い”を、講座の中で言葉にしました。

すると、講座が終わって片づけをしている時、
一人の受講生の方が、そっと私のところに来てこうおっしゃいました。

「先生、今日のお話は、まさに私のことでなんです……」

そう言いながら、静かに涙を流されました。

講座の中でタッチングを体験を行いましたので、もしかしたらタッチがきっかけで、心が少しほぐれて本当の気持ちを伝えてくださったのかもしれません。そうしてご自身の想いを打ち明けてくださったことを心から有難く感じています。

看護の視点から見る「家族ケア」の大切さ

私は看護師として、
「患者さんのケア」だけでなく「家族のケア」もまた看護の一部だと感じています。

とくに認知症や在宅介護のように長期化しやすい介護では、介護を担うご家族の負担は想像以上に大きいものです。

実際に、日本看護協会も次のように述べています:

「介護者が介護を継続できるよう、身体的・精神的な負担の軽減、社会的孤立の防止を目的とした支援が求められる」
(日本看護協会 家族介護者支援ガイドライン 2012)

超高齢化社会を迎える中で、看護の現場でも今、「支える人を支える視点」=レスパイトケアの重要性が再認識されているのです。

レスパイトケアとは?|介護者にも休息が必要です

「レスパイトケア」とは

介護をしているご家族が一時的に介護から離れて、心と身体を休めるための支援や仕組みのことです。

介護は、体力や時間という身体的な負担だけでなく、感情や関係性といった心理的な負担もかかります。自分のことを後回しにして、誰にも言えずに頑張ってしまう方も多い。
だからこそ、“安心して休める時間”が必要です。

タッチングケアができること|触れることでほっとひと息」つける時間を届けたい

タッチングケアは、
不安や孤独を抱える人の心にそっと寄り添い、
言葉にならない想いを、やさしく受け止める力があります。

介護をしているご家族が、「触れられる」そして「触れる」という体験を通して、少しでも自分を大切に思える時間になればと願っています。

カルチャーで学ぶことの意味

私は、以前からカルチャーセンターでタッチングケアの講座を開催しています。今までも介護をされているご家族の方が、たくさん講座を受けに来てくださっています。

カルチャー教室という場は、
☑ 社会とのつながり
☑ 脳の活性化
☑ 新しい人間関係
☑ 「私らしさ」の再発見

など、生活に彩りをもたらす場所でもあります。

でも何より、介護をしている方にとっては、ほんの少し介護から離れて“休息をとる”きっかけになる場所かもしれません。

そして、「介護をしているのは自分だけじゃない」と感じられる時間にもなると思うのです。

自分のための時間を持つことに、罪悪感を感じる必要はありません。
“ひとりじゃない”と感じられることが、何よりの支えになることもあります。

 

支える人が、支えられる時間を

介護は長く、見えにくく、語りにくい道のりです。それでも日々、介護を続けるご家族に、看護師として、そして触れるケアの実践者として、寄り添える機会があればと思っています。

AIがつないでくれたご縁から新しく始まる講座も、誰かにとっての「ひと息つける時間」になりますように。

そしてこれからも、タッチの力で「休んでもいいんですよ」と
背中をそっと押せる存在でありたいと思っています。

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この記事を書いている人

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見谷 貴代

看護師/アイグレー合同会社副代表 アロマセラピストから看護師になり、緩和ケア病棟や高齢者施設で5,000人の患者にタッチングを実践。病院や高齢者施設、製薬会社、企業などで研修や講演を実施。大学でも非常勤講師として活躍している。