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看護の日に寄せて -ナイチンゲールに学ぶ“そばにいる”というケアの力-
5月12日は看護の日

5月12日は、フローレンス・ナイチンゲールの誕生日。そして「看護の日」として、全ての看護師さんに感謝が寄せられる日です。
「ランプの貴婦人」と呼ばれた看護師
ナイチンゲールは1854年、イギリス政府の要請で38人の看護師とともに、トルコのスクタリ(現在のイスタンブール)にある軍病院へ派遣されました。到着当初、病院は非常に劣悪な環境で、衛生状態も悪く、負傷兵の死亡率は非常に高かったのです。ナイチンゲールは、「ランプの貴婦人(Lady with the Lamp)」」と呼ばれていました。彼女が夜、静かにランプを手に持ち、病棟を歩きながら、一人ひとりの兵士のそばに寄り添ったその姿に、兵士たちが深く心を動かされたからでした。
それでも、ナイチンゲールはその呼び名を嫌い、「天使とは、美しい花をまき散らす者ではなく、苦悩する者のために戦う者だ」と言ったことは今では名言となっています。
死亡率42%から2%へ――看護が変えた未来
ナイチンゲールの功績はそれだけではありません。彼女が赴いた当初は、軍病院の死亡率は42%にも達していたと言われています。
汚れた水、不衛生な環境、換気の悪さ、物資の不足、
そうした状況を目の当たりにし、排水・清掃・換気、手洗い、消毒、食事と彼女は病院の衛生環境を徹底的に改善しました。
そして患者一人ひとりを観察し、記録し、声に耳を傾ける。その積み重ねにより、わずか半年で死亡率は2%台にまで下がったのです。手を当てる。掃除をする。食事を整える。小さな積み重ねが命を救いました。
タッチングケアの原点は、ナイチンゲールの中に
これらの偉業の背景にあるのは、目の前のいのちを丁寧に見つめる姿勢だったと私は思っています。兵士の「そばにいる」、「見守る」、「目を向ける」といった行為は、看護の原点を象徴しており、まさに「タッチングケア」の精神に通じるものがあります。
メディカル・タッチは、患者さんに「寄り添う」ことを具体的な形にしたケア技術です。触れることは、言葉が無くても、「大丈夫ですよ」「安心してくださいね」と寄り添う気持ちを伝えてくれます。
私は看護で患者さんに「触れること」がもつ力を信じ、触れるケア=メディカル・タッチを多くの方に届けたいと活動しています。
今日は「看護の日」。今、看護の現場は、時間に追われ、業務に追われ、つい目の前の“ケアの本質”を忘れてしまいそうになることもあります。
でも、ナイチンゲールが灯した光は、今も私たちの中に息づいています。看護の日にケアの原点を考えてみたいと思います。