認知症患者さんへの看護で、「うまくいかないな」、と感じたことがありませんか?
例えば、清拭の時に
手を振り払われたり、身体の向きを変えるのが難しい場面に
出会うこともあるかと思います。
丁寧な声かけを心がけていても、
うまくいかないことが続くと、
どう関わればいいのか?迷うこともあると思います。
ケアを拒否されると、
安全のために身体を支えたり、
時には力が必要になる場面も出てきます。
すると、
・看護師側の身体的な負担が増える
・「早く終わらせなければ」という焦り
・ケアそのものが大変な時間になる
そんな経験をしている方も少なくないのではないでしょうか。
こうした場面が続くと、ケアそのものが「作業」をこなすだけの時間になり、
お互いにとって負担の大きいものになってしまいがちです。
関わり方をちょっと変えることで患者さんの反応が変わる
先日、認知症ケアに携わるメディカル・タッチ認定の看護師さんから、あるエピソードをお聞きしました。
他の病棟から、
「ケアの時の関わりが難しい認知症患者さん」の対応で
呼ばれることがあるそうです。
その看護師さんが必ずしていることがあります。
それは、いきなり身体を拭き始めるのではなく、
まずは脚や手に触れ、その方の緊張状態を手を使ってアセスメントすることです。
そして「タッチングの5原則」を使ってコンタクトをとる。
それだけで、それまで頑なだった反応が驚くほど変わり笑顔を見せることがあるそうです。
身体の強張りが解け、ケアを受け入れてくれたり、
体位変換をお願いすると、自然に身を任せてくれるようになります。
これは魔法ではなく、「触れる」ということを通じて、
脳に安心感を届ける技術の結果です。
始まる前の30秒がケアの質を決定づける
ここで大切なのは、
決して特別なことをしているわけではない、ということです。
清拭という看護技術そのものは同じです。
始める前の関わりが違うだけで、
患者さんの受け取り方は180度変わります。
認知症のある方にとって、
「何をされるか分からない不安」は、私たちが想像する以上に鋭いものです。
心地よく触れて、丁寧にお声掛けをして、その不安を和らげることは、処置をスムーズにするだけでなく、患者さんの尊厳を守ることにも直結します。
看護師自身の心のゆとりを取り戻すために
こうした関わりは、決して「患者さんのためだけ」ではありません。
ケアがスムーズに進むことで、看護師自身にも良いことがあります。
・身体を支える力や、無理な体位保持が減る
・「拒否されるストレス」から解放される
・ケアを通じて、患者さんとの信頼関係を再確認できる
「大変な業務」が「落ち着いた関わりの時間」に変わる。
それは、看護の本質的な喜びを思い出すきっかけにもなります。
忙しい現場だからこそ、再現できる技術を
とはいえ、時間に追われる現場で、一人ひとりに長く時間をかけることは現実的ではありません。
だからこそ大切なのは、時間をかけることではなく、
触れ方の質を少し変えることです。
メディカル・タッチは、特別なセンスが必要なものではありません。
エビデンスに基づき、誰もが現場で実践し、再現できる「触れ方」を目指しています。
心地良いタッチが患者さんの反応を変え、そして看護師自身の負担をもっと軽くすることができます。
メディカル・タッチは、無理なく看護が続けられるかかわり方のお手伝いができたらと思っています。




